「新型インフルエンザワクチン(A/H1N1)の接種について(素案)」に関する意見募集についてによりますと、
インフルエンザ患者の診療に従事する医療従事者、妊婦及び基礎疾患を有する者(この中でも、1歳〜就学前の小児の接種を優先)、1歳〜就学前の小児、1歳未満の小児の両親の順に、優先的に接種を開始する。なお、一つのカテゴリーの接種が終了してから、次のカテゴリーの接種を開始するものではなく、出荷の状況に応じて、各カテゴリーの接種を開始する。
未だに決定していなかったのに少し苦笑しますが、優先順位は、
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カテゴリー1:インフルエンザ患者の診療に従事する医療従事者
カテゴリー2:妊婦及び基礎疾患を有する者
カテゴリー3:1歳〜就学前の小児
カテゴリー4:1歳未満の小児の両親
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の順に
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カテゴリー5:小学生、中学生、高校生、高齢者
ここで現実的な問題を考えたいと思います。まずは、9/7付読売新聞より、
厚生労働省は6日、新型インフルエンザワクチンの接種を、国と委託契約を結んだ医療機関に限って行う方針を固めた。
対象の医療機関は市町村や地域の医師会が選ぶ。供給量に限りがある国産ワクチンを、最優先接種者から順に、適切に接種していく必要があるため、当面は医療機関を限定する必要があると判断した。
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市町村や地域の医師会が選ぶ
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医療機関を限定する必要
この辺はヴァリエーションがあって、市役所なりが「優先接種券」みたいなものを発行して、それを持って指定医療機関に受診するというのも考えられますが、その方式では「優先接種券」の印刷確保とそれに伴う予算措置の問題が出てくるでしょうから、時間的には厳しいかと思われます。そうなると全量管理の方法としては、
方式としては事前承諾方式の方が管理としては優れていますが、問題は時間です。より完全な全量把握のためには手間とヒマと時間がより必要です。インフルエンザの予防接種は10月後半からせいぜい1月までの短期決戦です。この間に新型ワクチンを接種するだけでなく、季節性ワクチンも希望者には接種しないといけません。季節性だけでも音を上げそうになるのに、新型接種のために煩雑な事務手続きが増えると眩暈がしそうです。それとこれは未確定情報ですが、中間管理職様の「新型インフルワクチン接種、医療機関を限定」 のSeisan様のコメントですが、
新型インフルエンザワクチンの供給は10ccバイアルと1ccバイアルの二本立てのようですよ
Seisan様はワクチン情報に詳しい方なんですが、10mlのバイアルとはゴツイ感じがします。1回分の接種量が成人で0.5mlですから20回分、幼児になると0.2mlですから50回分になります。小児科ではあんまり使いたくないサイズですが、足らなくなると回ってくるかもしれません。こういうデカイ規格は週末に使いにくいんですよね。ロスが増えない様に願っておきます。
もう一つ、手間とヒマの問題ですが、9/7付読売新聞に、
不足する分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。ワクチン到着は12月下旬以降になる見通しだ。
ワクチンの輸入スケジュール、また短期間とは言え治験を行なう予定だそうですから、ここまでずれ込むのは理解しないといけないでしょうが、ここは5つ目のカテゴリーの接種になります。実際にどこまで季節性と新型の重複接種が行われるかわかりませんが、12月下旬といえば例年ならインフルエンザ予防接種のピークが越えかける時期です。
さらに言えば年末年始休みを目前とする時期で、この時期に小児科なら小中学生の新型駆け込みが殺到されるとかなり辛くなります。12月下旬が12/20以降とすれば、年内は1週間足らずしか時間がありません。もちろんこの時期にも季節性は接種していますし、新型の優先者も接種は残っていると考えられますから、さほどの応需は非常に難しくなります。
そうなるとカテゴリー5の主戦場は来年1月になります。おそらくカテゴリー5を接種する頃には、指定の枠は取り払われている可能性もあると思いますが、小児科診療所的にはかなり厳しい運用が要求されそうな気がします。新型インフルエンザ対策に協力するのは医療機関の努めですから、歯を食いしばっても頑張らないといけませんが、願わくば付随する事務作業の増大が負担になり過ぎない様に祈ります。
たぶんと言うより間違い無く、次々に接種の優先順をどうするかの通達とか事務連絡が、いっぱい、いっぱい舞い込む気がします。ついでにマスコミあたりからワクチン難民の容赦ない批判記事も出てくるのも確実です。
しかし現実には例年の季節性のワクチン接種の上に、さらに新型接種の物理的負担が乗っかっているのですから、いくら「すみやかに、希望者全員に」とか号令されても、出来ない時はできません。さらに言えば、新型の年内の早期流行が確実視されていますから、接種者と発熱患者の分離はうるさく言われだす気がしますが、そうは言われても去年より増えた接種者と発熱患者を整然と分離して、なおかつ数をこなすのは相当な難事です。
なるようにしかならないでしょうし、ワクチン接種はいつかは終わりが来ますから、その日を目指して日々の仕事に専念するしかないでしょう。もっとも「医療機関の指定」が病院限定の可能性もあるので、そうであればすべては杞憂になります。ただし開業医を除外すれば病院は地獄を見そうな気もしないでもありません。
そう言えば次期厚労大臣の候補の名前はまだ挙がってないような気もします。新型インフルエンザは政治課題でもありますから、ここまでのワクチン情報も根こそぎひっくり返る可能性も無いとは言えません。来月には接種が始まるはずですが、いつになったら具体的な手順が決まるかやきもきしています。