医学部定員来年度も369人増へ 「地域枠」県外大学もOK
深刻な医師不足を解消するため、文部科学省は17日、本年度に過去最多となった大学医学部の総入学定員枠を来年度も369人増やし、国公私立79校で総定員8855人にすることを決めた。文科省は今後10年間、この総定員規模を臨時措置として続ける方針。
都道府県が地元勤務を義務付ける代わりに奨学金を出す「地域枠」は、近隣の都道府県の大学にも設定できるように変更したのが特徴。都道府県ごとに7人まで認める。
文科省は「医師不足解消のため県境をこえて積極的に連携してほしい」としている。
また、歯学部の定員を減らす大学は、減員の範囲で最大10人の医学部増員を認め、大学全体では30人の増員枠とする。具体的な増員計画は各大学が10月末までに文科省に申請する。
医師不足が叫ばれているので医学部の定員を増やす事が決定されたことを報じる記事です。この記事によりますと、医学部定員は8855人になり、なおかつ、
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文科省は今後10年間、この総定員規模を臨時措置として続ける方針
この15%の定員増加がどれぐらいの医師増加に効果があるかになります。こういう計算は将来の推定人口の計算も絡んでめんどくさいのですが、2006年の医師の需給に関する検討会報告書の参考資料で試算してくれているので利用します。おそらく現時点で厚労省公認の人口推計モデルを使っていると考えますし、医師数に関しては単純な四則演算なので信用できると考えるからです。
定員モデル | 2010 | 2015 | 2020 | 2025 | 2030 | 2035 | 2040 |
7700人 | 282 | 299 | 314 | 326 | 334 | 339 | 340 |
8085人(5%増) | 282 | 300 | 317 | 330 | 340 | 347 | 350 |
8470人(10%増) | 282 | 301 | 319 | 335 | 346 | 355 | 359 |
ちょっと補足しておきますが、このモデルでの医師数は御存知の通り定年は無く、男性医師も、女性医師もまったく同等に働く前提で計算されています。それと全医師数の中の5%が非臨床活動に従事しているので除外となっています。従来の7700人定員に対する5%増、10%増の医師数推定モデルがあるわけですから、グラフにしてプロットすれば15%増の医師数もおおよそ推定できるはずです。で、やってみると、
定員モデル | 2010 | 2015 | 2020 | 2025 | 2030 | 2035 | 2040 |
7700人 | 282 | 299 | 314 | 326 | 334 | 339 | 340 |
8855人(15%増) | 282 | 302 | 322 | 340 | 353 | 363 | 368 |
7700人に対する 増加数 |
0 | 3 | 8 | 14 | 19 | 24 | 28 |
7700人に対する 増加率 |
0% | 1.0% | 2.5% | 4.3% | 5.7% | 7.1% | 8.2% |
もちろんこれは定員増が10年限定ではなく、永続するとの前提ですから、10年先に医学部定員の削減が再び行なわれれば、20年後、30年後の推計はもっと小さくなります。もちろん逆にさらなる定員増加が行なわれれば推計は大きくなります。どう展開していくかの予想は現時点では非常に困難ですが、15%増の8855人では、20年ぐらいでは影響はそれほど大きくないとも思われます。
このあたりの影響は現在の医師の年齢により気になり方は違うでしょうが、10年先でもそうですし、20年先、30年先となると幾ら試算しても、その時の医療がどうなっているか、日本がどうなっているかなんて誰にも予測できないと考えています。一部に医師過剰を強く懸念する声がありますし、すぐにも歯科の二の舞を心配する声もありますが、とりあえず30年ぐらいはそんなに心配しなくても良いような気もしています。
ちなみに社会実情データ図録様の2007年のOECD諸国の医師数がありますが、表を引用すると、
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2007年時点で日本の人口10万人当りの医師数は210人