東京妊婦脳出血死亡報道

亡くなられた患者妊婦の御冥福をお祈りします。

断続的に情報が出てくるので、あくまでも現時点で私の知る限りとのお断りを入れさせて頂きます。さらにとなりますが、情報の99%はマスコミ情報でおそらく事実と考えられるものだけを出来るだけピックアップしていきたいと思います。まずは10/23付神戸新聞より時刻経過です。

日付 時刻 出来事
10/4 PM7:00頃 東京都江東区の地元産婦人科医師から都内の妊婦(36)の受け入れ可否問い合わせ、当直医が「土日は基本的に母体搬送を受け入れていない」と回答、受け入れ可能な医療機関名を教える。
7:45頃 妊婦の容体が悪化し、他の医療機関が受け入れ困難だったため、再度母体搬送の依頼。当直医が産科の医師1人を呼び出す。
8:00頃 地元産婦人科医師に母体搬送が受け入れ可能と連絡。
8:18 救急車で墨東病院に到着。救急車内で意識レベル低下。
8:30頃 脳卒中が疑われるため、脳外科医の当直医が対応
9:41 帝王切開で出産
10:24 頭部の血腫除去術を開始
10/5 AM1:28 手術終了
10/7 PM8:31 脳内出血による死亡確認


他の情報で補足しておくと
  • 地元産婦人科 → 五の橋産婦人科墨東病院から500mらしい)
  • 妊婦 → 出産間近の妊婦
  • 墨東病院産科の当直医師 → 後期研修医(5年目の研修医という説もあり)
  • 児は無事であった
10/23の産経ニュースと同じくAsahi.comから受け入れ困難との返答を行なった病院とその理由は、
  1. 順天堂大学医学部付属順天堂医院(文京区)


      当日の産科・婦人科の当直医は2人いたが、いずれも別の出産に対応していた。産科・婦人科の計61床も満床で、受け入れは不可能と答えた


  2. 東京慈恵会医科大付属病院(港区)


      ベッド数9の新生児集中治療室(NICU)は満床だったうえ、前日に生まれた双子を管理中で、当直医2人は手が回らなかったという。産科には当直医も2人いたが、破水した妊婦が待機中で「受け入れられるような状況ではなかった」


  3. 日本赤十字社医療センター(渋谷区)


      6床の母体胎児集中治療室が満床なうえ、別の妊婦も搬送されていたため、当直医3人では対応できないとして搬送を断った


  4. 日本大学医学部付属板橋病院(板橋区


      12床の集中治療室が満床で断るしかなかったと説明


  5. 慶応義塾大学病院(新宿区)


      「下痢、嘔吐(おうと)、頭痛の症状がある」という医師の言葉を聞いて感染症の疑いがあると判断。産科の個室の空きを確認したが埋まっていたため、受け入れられなかった


  6. 東京慈恵会医科大学付属青戸病院(葛飾区)


      もともとリスクの高い新生児の対応ができないうえ、当日は脳外科医の当直医が不在だったと説明


  7. 東京女子医大東医療センター(荒川区


      記事情報なし。受け入れ可能とした病院の可能性が高いと考えます。
この7つの医療機関への搬送要請ですがAsahi.comには、

 救急車で運ばれてきた妊婦の異変に気づいた江東区亀戸6丁目、「五の橋産婦人科」(川嶋一成院長)の医師は、墨東病院に断られた後、周産期母子医療センターのネットワークで診察可能な病院を探したという。

 この医師は、順天堂大学医学部付属順天堂医院(文京区)に4日午後7時半すぎ

7:00頃に墨東病院に搬送要請を行い、次の順天堂大学医学部付属順天堂医院には7:30頃に搬送要請を行なったと考えられます。7:45には墨東病院に再度の搬送要請を行なっていますから、7つの医療機関には15分間のうちに搬送要請を行なった事になり、受諾したとされる1つを除き6つの医療機関に搬送困難の返答を得た可能性があります。もっとも7:45の時点で7つのうちどこまで返答を得ていたかはわかりません。

東京のシステムは知らないのですが、墨東病院には直接電話をかけていたのはまず間違いないと考えられます。しかし他の7つの医療機関に15分で直接電話をかけるのは難しいと考えられ、ファックスでも使ったのではないかとも考えられます。この辺は情報を頂ければと思います。


墨東病院はその筋には有名な病院ですが、総合周産期医療センターではあります。産科の必要定員は9人だそうですが、現在は4人の常勤となっています。事件の夜の当直医は後期研修医となっていますが、これが常勤医の中に数えられているかどうかはわかりません。それと墨東病院のHPには、

産科の外来診療の縮小について

当院の産科におきましては、医師の欠員が生じたため、平成18年11月13日(月曜日)からしばらくの間、外来診療を縮小いたしますのでご了承ください。

  • 紹介状の有無に関わらず、新規の予約受付及び予約外の受付は行っておりません。お近くの医療機関を受診されるようお願いいたします。
  • 既に予約のある患者様、救急の患者様につきましては従来どおり診療いたします。
  • 予約のない再診患者様は、再診予約をするか、総合案内でご相談ください。
大変ご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力の程よろしくお願いいたします。

2年前から戦力ダウンのため診療を縮小しているのが今も続いているのが確認できます。

最後に今回の事件の搬送条件は、搬送元産科医と搬送先産科医の間で意思疎通をやや欠いたとの報道もありますが今のところ真相は不明です。それはともかく条件として、

  1. 臨月の妊婦である
  2. 脳出血の可能性あり
この二つの条件を満たす必要があります。これに必要な医師の数の試算として、
  • 脳外科医:2人
  • 産婦人科医:2人
  • 新生児科医:1〜2人
  • 麻酔科医:1人以上
もちろん医師だけでなくICUNICUの確保も必要条件です。これだけの条件を満たす病院は、たとえ東京であっても土曜の夜に容易に整わない事を示したと考えられます。