9/9付け時事ドットコムより、
社会保険庁は9日、厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額の改ざんが相次いで判明したことを受けて、厚生年金記録全件について、改ざんが疑われるケースを調査する方針を決めた。該当する人には文書で通知し、記録の確認を求める。政府が同日開いた「年金記録問題に関する関係閣僚会議」に報告した。
標準報酬月額は給与水準に相当し、会社が社会保険事務所に届け出る。総務省の年金記録確認第三者委員会は今月3日時点で、56件について合理的な減額の理由がないとして改ざんを認定。ほかにも同様の申し立てが相次いでおり、件数はさらに増える見通しだ。
お役人のイメージとして融通は利かないが決められた事は杓子定規に守るというのがあります。融通が利かない点でしばしば批判が出ることもありますが、それでも杓子定規に規則は最低限守ってくれているの安心感はあったと言う事です。今回の記事の内容は、先日に内部告発云々の記事も読んだ様な気がします。おそらくその話を受けて厚労省が調査した一端かと考えられますが、問題点は、
厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額の改ざんが相次いで判明
どの程度かと言えば、
今月3日時点で、56件について合理的な減額の理由がないとして改ざんを認定。ほかにも同様の申し立てが相次いでおり
内部告発者の話によれば社会保険庁全体で「競って」行なわれていたそうですから、これもまた泥沼の確認作業が展開されるように考えられます。社会保険庁関連の不祥事はあれこれありすぎて、正直なところ「またか」と軽く考えてしまいそうですが、冷静に考えて相当悪辣な事であるのは誰にも分かります。標準報酬月額の計算法なんてよほどの専門家でない限りわかりませんからブラックボックス状態であり、そこで何を操作されても受け取る方は「そんなものか」と納得する他がない点を突いたものかと考えられます。
ブラックボックス部分についてはお役所、お役人への「信用」が担保となっており、その信用を根こそぎ覆すような重大な不祥事と考えるのが適当と思われます。これは社会保険庁だけではなく、実直が取り柄と言ってよいお役人全体の信用を失わせる重大な詐欺行為であり、この行為のために関係のないお役人がどれほどの不利益を蒙るか想像がつきません。合法的な天下り問題とは質が違うように感じます。
この記事を読んで思い出したのが、第159回国会予算委員会 第18号 平成16年3月3日の質疑の様子です。この時に質問に立った海江田委員は、
この本の内容について行っております。この本は国会図書館にも献本された立派な公式書籍です。海江田委員が引用した個所を再掲します。
それで、いよいよこの法律ができるということになった時、これは労働者年金保険法ですね。すぐに考えたのは、この膨大な資金の運用ですね。これをどうするか。これをいちばん考えましたね。この資金があれば一流の銀行だってかなわない。今でもそうでしょう。何十兆円もあるから、一流の銀行だってかなわない。
これを厚生年金保険基金とか財団とかいうものを作って、その理事長というのは、日銀の総裁ぐらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だと。金融業界を牛耳るくらいの力があるから、これは必ず厚生大臣が握るようにしなくてはいけない。この資金を握ること、それから、その次に、年金を支給するには二十年もかかるのだから、その間、何もしないで待っているという馬鹿馬鹿しいことを言っていたら間に合わない。
そのためにはすぐに団体を作って、政府のやる福祉施設を肩替りする。社会局の庶務課の端っこのほうでやらしておいたのでは話にならない。大営団みたいなものを作って、政府の保険については全部委託を受ける。そして年金保険の掛金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。二十年先まで大事に持っていても貨幣価値が下がってしまう。だからどんどん運用して活用したほうがいい。
何しろ集まる金が雪ダルマみたいにどんどん大きくなって、将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから、それまでの間にせっせと使ってしまえ。
この問題については前にも取り上げた事があります。これはそもそもなんですが、年金を保険方式にするか賦課方式にするかの根本問題があったそうです。理由はいろいろあったようですが、本来は賦課方式が現実的であったにも関らず、決定したのは保険方式になったのがこの発言の背景だそうです。保険方式では支払い時まで後生大事に抱え込んでも、インフレによる目減りなどで足りなくなるのは目に見えており、破綻するのは確実だの観測があったとも言われています。
でもって実際に支払額が不足すれば嫌でも賦課方式に変更されるだけだから、集まった分だけドンドン使ってしまえの進軍ラッパが鳴らされていた様子が書かれています。使い込んで破綻する時期が早まる点についても、「早まるだけの事で大した事はない」との姿勢です。随分バカにされた話ですが、こういう壮大な気分の下で
年金保険の掛金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。
理由はわからないでもありませんが、こうもあからさまに書かれると良い気分はしません。またそんな本音を本にして配って歩いていた優雅な時代でもあった事もわかります。
で、なんですが、今回の標準報酬月額の改竄なんですが、目的は誰が考えても年金の支払い節減です。でも窓口等の担当者はいくら改竄して支払いを減らしても、自分の手許に節減分が入るわけではありません。もしポッケに入れていたらまた段違いの問題が発生するのですが、そこまで腐っていないと今日は信じておきます。では自分に直接のメリットが乏しい改竄を「競う」様に行なわれたかですが、これはお役人に命令できる人からの指示と考えるのが当然です。お役人に命令できる人とは官僚になります。
官僚が念頭においていたのは賦課方式への変換時期であると思われます。賦課方式への変換への懸念は、
どちらかと言うより「どちらも」みたいに感じますが、保険方式を1日でも長く維持したほうが厚労官僚にとってメリットは大きいですから、「競って」改竄を行なうように指示を下したと考えられます。
ここで言えるのは、しっかりツケだけは払ってください。
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何十兆円もあるから・・・(中略)・・・せっせと使ってしまえ。
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厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だと。