今年3/25付の舛添厚生労働大臣の厚労省閣議後記者会見概要より、
私からは、まず、厚生労働省の調査の結果、本年1月以降分娩の休止または制限が予定されている医療機関が全国で77ヶ所ありました。これを更に細かく見たところ、このうち70ヶ所は、産科医療機関の集約化に伴う休止とか、近隣の医療機関で対応が可能というようなことで、地域全体で対応できる。つまり、77のうち70は、それぞれの地域で、大変なのですけれども、なんとか頑張ってやってもらって地域で対応できる案件であったと。その他の7つなのですけれども、その地域や都道府県だけでは産科医療を確保する手立てがたてられないということで、7つ赤信号が点ったということですが、この7機関について対応を今までやってみて、今日段階で対応できたところを申し上げます。
厚生労働省の調査の結果、77ヶ所の分娩休止医療機関があり、検討のの末、7ヶ所が絶対防衛分娩機関として選ばれた事をまず話しています。3/25時点の7つの絶対防衛分娩機関への支援状況ですが、
病院名 | 県 | 支援内容 |
県立南会津病院 | 福島 | 防衛医大と愛育病院からの後期研修医派遣 |
飯田市立病院 | 長野 | 信州大より派遣 |
伊那中央病院 | 長野 | 信州大より派遣 |
公立久米島病院 | 沖縄 | 県立病院が週1回派遣 |
富士重工業健康保険組合綜合太田病院 | 群馬 | 県、大学、病院間で今検討中 |
国立病院機構長野病院 | 長野 | 引き続き調整 |
藤枝市立総合病院 | 静岡 | 引き続き調整 |
福島の県立南会津病院には、あの埼玉から防衛大臣指令(みたいなもの)まで発せられて支援を行っていますが、それでもこの時点で国立病院機構長野病院と藤枝市立総合病院は
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引き続き調整
これは、今申し上げたように、もう少し時間が後数ヶ月ありますので引き続き調整をするということで、これは緊急措置ですけれども、とにかく分娩の停止ということがないように研修も行えるようにそこまでなんとか手を打ちました。
舛添厚生労働大臣の言葉によれば、分娩を休止しない事はもちろんの事、「研修も出来る」様に支援すると明言されています。77ヶ所から7ヶ所まで絞り、この7ヶ所を大臣が記者会見までして「支援する」と言ってられるのですから、通常は「絶対大丈夫」に近い意味と受け取っても良いかと思います。この「絶対大丈夫」であったはずの「数ヵ月後」の状況ですが、7/24付け毎日新聞(地方版)より、
国立病院機構長野病院:来月から産科医1人 分娩や手術が不可能に /長野
国立病院機構長野病院(上田市)は24日の会見で、8月1日以降、産婦人科常勤医師が1人体制になることから分娩(ぶんべん)・手術が不可能になり、診療も婦人科の外来診療のみに限定すると発表した。常勤医師も来年3月までの期限付きとしている。
同病院の産婦人科は昭和大(東京都)から派遣されているが、4医師全員の引き揚げを通知され、昨年12月から出産予約を休止した。病院側は派遣の継続、他大学に派遣を依頼してきたが実現しなかった。2、5月に1人ずつ医局に戻り、7月中に全員引き揚げ予定だったが、常勤医師1人は確保してもらったという。
上田・小県地域では年間1800件前後の出産があり、同病院が扱う500件弱は上田市産院と2産婦人科病院が引き受ける。ハイリスク、異常分娩は佐久、長野など周辺病院が対応する。進藤政臣院長は「産科医確保に引き続き努力するが厳しい。常勤医がいる間に助産師外来開設に向け研修を進めたい」と語った。【藤澤正和】
ソースが毎日しかないのは置いておいても、
- 8/1から常勤医が3人から1人に
- 8/1から分娩・手術は出来なくなる
- 残った常勤医も来年3月まで
分べん予約を休止、藤枝市立病院 産科医「辞意」で
唯一の産科医が辞意を漏らしていることが分かった藤枝市立総合病院(藤枝市駿河台)の毛利博院長は25日、当面、新たな分べんの予約受け付けを休止する方針を明らかにした。既に来年3月まで、22件の予約を受け付けたが、今後、周辺の病院などに受け入れを依頼する。
院長と、管理者の北村正平市長が会見で明らかにした。両氏は「(医師の)辞職の意向は固い」との感触を示した。新たな医師の確保のめども立っていないため、休止を判断せざるを得なかったという。
院長によると、医師は18日に「退職願」と書いた文書を出してきた。内容は辞職する旨ではなく、診療体制の在り方などが中心で、「120%万全の体制でないと自信がない。医師が2人以上いる所で働きたい」などと理由を述べたという。
院長は「今後、地元住民に迷惑を掛けないようにしたい」と強調し、市長も「医師ともう少し話し合いたい」としている。
ここもまた唯一の産科医の辞意で厚生労働省の支援策は失敗した事がわかります。
ちなみにもう一つ3/25時点で調整中であった総合太田病院ですが、HPを読む限り分娩は続いているようです。常勤医はお二人のようで、すんなり卒業されているとして55歳と49歳になります。ただ外来担当医表を見ると3人の非常勤医のお名前と「慶応医師」とありますから、これはなんとか持ちこたえていると見てよいのかもしれません。実態はわかりませんけどね。
結局のところ3月に華々しく絶対支援を打ち出した7つの医療機関のうち2ヶ所からは厚生労働省は撤退したようです。ただ長野についてはあんまり情報が無いのですが、藤枝については補足情報があります。中間管理職様の藤枝市立総合病院:産科診療中止へ 「1人で診療不安」医師が退職願」 「分べん予約を休止、藤枝市立病院 産科医「辞意」でに6/6付の読売新聞記事が引用されています。そこには、
藤枝市立総合病院の産婦人科の医師3人が6月末で退職する問題で、県は6日、厚生労働省への医師派遣要請を断念したことを明らかにした。同病院で6月1日から新しい産婦人科医1人が勤務を始め、厚労省から「医師不足改善の見通しが立った」との見解が示されたためという。
この6/1から勤務した産科医が今回退職する産科医になります。つまり国の絶対防衛分娩医療機関の7つに選ばれても、たった一人産科医を招聘したら「分娩の中止がない」「研修も行なえる」と厚労省は判断するようです。1人ではあんまりだと思うのですが、藤枝はさらに「悪い」ことをやったようです。これも記事にあるのですが、
同市が独自に佐賀県内で開業していた男性産科医を市立総合病院の医師として確保し、さらに別の産科医1人とも交渉を始めた。
1人招聘しただけでは「まだしも」だったかもしれませんが、2人目を交渉したのが駄目押しになったようにも受け取れます。医師の眼からすれば藤枝が独自ルートで招聘した2人と、厚労省派遣分を合わせてようやく以前の3人体制に戻るだけですから、そこまで整って「分娩中止がない」「研修も行なえる」の水準かと思うのですが、厚労省の見解はそうでなく
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1人確保し、もう1人交渉中(元は3人体制)
しかし、しかし、なんですが、動かなければそれで良しかと言われれば、詳細は分かりませんが、同じように絶対防衛分娩機関に指名され、動かなかった、もしくは成果がまったく得られなかった長野は国からの支援なく壊滅しています。動いても駄目、動かなくても駄目の究極の選択が常に迫られている事が、今回の事例で広く示されたと考えられます。
え〜と、これだけではまともすぎるので、少しだけ蛇足の推測を入れておきます。厚生労働省の7つの分娩機関への支援計画ですが、
- 計画時点では成算があった
- 計画だけで成算は無かった
- 予想外のトラブルが重なり支援しきれなかった
- 厚労官僚がサポタージュした
- 真剣に尽力したが手が及ばなかった
- 厚労官僚が輪をかけてサポタージュした