秋葉原の事件

秋葉原で理不尽な凶行に見舞われ命を落とされた方に哀悼の意を表し、治療中の方々の一刻も早い回復を祈ります。

これは天漢日乗様のところで見つけた秋葉原の事件に対する関東自動車のアナウンスメントです。

2008年6月9日

6月8日秋葉原通り魔事件の報道について
     この度の事件で犠牲者となられた方々とその家族の方々に心から哀悼の意を表します。
     また、怪我をされた方々の一日も早いご回復をお祈りいたします。
     お騒がせして誠に申し訳ありません。

     加藤容疑者は、人材派遣会社・日研総業株式会社の社員として、平成19年11月より弊社東富士工場の塗装工程に派遣されておりました。勤務態度は6月4日(水)までは欠勤も無く、真面目に仕事に取り組んでおりました。 また、日常のミーティングを通じコミュニケーションを図り、管理、監督に努めている中では変わった様子はみられませんでしたので、今回の事件に対しては弊社としても非常に驚いております。

     今後、人材派遣会社に対しては、このような不祥事が二度とないように、人材の確保、管理、監督について要請していきたいと思います。
     また、弊社としましても管理、監督を含めて良い職場づくりに努めていきたいと思います。
以上

容疑者が日研総業派遣社員で、裾野市にあるトヨタグループの関東自動車工場勤務である事は既に既報の通りです。普段はあんまり見ないのですが、タマタマ見ていた一昨日の報ステなんかでは、「なぜか」勤務先の会社名を一言も言わなかったようです。報ステが伏せたぐらいで伏せきれる話ではないので、容疑者が派遣されて勤務していた関東自動車にも取材が行われ、その一環がこのアナウンスメントと考えられます。

まあ勤務していたからといって会社が必ずしも責任を負わなければならない事もないのですが、これも既に報道の通り、容疑者が犯行に及んだ引き金の一つが、派遣勤務先の雇用に関る事であったのはほぼ間違いないとしても良いでしょうから、どんな状態であったかは報道するに当たり取材されるでしょうし、会社もなにか声明の一つぐらい出しておく必要を考えたのだと思われます。

平成19年11月より弊社東富士工場の塗装工程に派遣されておりました。勤務態度は6月4日(水)までは欠勤も無く、真面目に仕事に取り組んでおりました。 また、日常のミーティングを通じコミュニケーションを図り、管理、監督に努めている中では変わった様子はみられませんでした

この部分はほぼ事実のように現時点では考えられます。たとえ事実に反する部分が多少あったとしても、余ほどひどい事が無い限り、勤務中には問題は見られなかったとこの手の声明では結論付けると考えられます。「問題あり」なんて事を言えば痛くもない腹を探られますからね。ここに関しては決まり文句みたいなところもあるのですが、

今後、人材派遣会社に対しては、このような不祥事が二度とないように、人材の確保、管理、監督について要請していきたいと思います。

ここは天漢日乗様が強烈に突っ込んでますが、

 こんな凶悪犯罪起こすようなクソカス派遣してくるんじゃねえよ、ボケ。天下のトヨタグループの名前に泥塗りやがって、日研総業は次からウチじゃ使わねえからな。
と翻訳してもよろしいでしょうかね。

私も補足として突っ込めば、関東自動車は凶行が起こるまで8ヶ月の間の容疑者への評価として「真面目に仕事に取り組んでおりました」「変わった様子はみられませんでした」としているので、不祥事を起こすような人物とは見抜けなかった事になります。それを自分の事は棚に上げて派遣会社の人物鑑定が悪いとの言い草は、派遣元会社と派遣先会社の日常の力関係の本音を如実に表していると考えます。おそらくですが派遣元の日研総業は社長以下、派遣先の関東自動車やグループの親会社であるトヨタに米搗きバッタのような謝罪行脚に走り回っていると考えられます。

この派遣社員についておもしろいHPがあります。世紀末期間工伝説・斗与太の拳と題され、実際にトヨタ期間工をされた経験談と判断しても良いかと思われます。それぐらい細部にリアリティが溢れています。一読されると非常に楽しめる内容です。そこに2004年更新なのでチト古いですが、トヨタ期間工Q&Aまとめてのがあり、

 Q:派遣と何が違うの?
 A:派遣は時給が良いが、期間工と違い満期のお金は出ない

4年が経過している事と、グループの子会社である関東自動車なので若干は相違はあるとも考えられますが、大筋は変わらないと考えてもよさそうです。そこに評価というものがあり、

評価とは?

 期間従業員の勤務態度をA・B・Cの三段階で評価したもの。一度満了後再赴任を希望する際にC評価を付けられたものは約三年間は再赴任は不可能とされている。

実質評価は

  • 遅刻、欠勤の有無
  • 作業時の態度、能率
  • 職場での人物評(協調性等)で職場のGL、CLが裁定し人事へ届け出ている
実際C評価になった例として、
  • アトピーが酷く工場ない作業に向かない
  • 遅刻欠勤が多い
  • 突発休暇が多い
  • 職場内で問題を起こす
等の者がいたが誰が見てもおかしいと言うC評価のものいた。職場上司と折り合いが悪かったため再赴任不可になったという例も多々聞く事がある。人事Gはもう少し慎重に周辺調査等をするべきではなかろうか?

もちろんお話はトヨタ本社ではなく子会社の関東自動車ですが、実際は似たり依ったりと考えても良いかと思います。まず容疑者は関東自動車への派遣業務の延長を望んでいたのは各種報道やネット情報から高い可能性があります。これは憶測になりますが、あわよくば正社員採用の夢も持っていたかもしれません。そのためには評価を獲得する必要があり、真面目に勤務していたと考えられます。

ここで話は戻るのですが、凶行の引き金になったリストラは昨日の報ステでも、6/9付毎日jpにも、

 工場での担当は塗装ライン。月曜から金曜の週5日勤務で1週間交代で日勤と夜勤についていたが、勤務態度はまじめで、公休以外は休まなかった。時給1300円で月約20万円の収入があった。契約期間は今年3月31日までだったが、1年間更新されていた。

 派遣社員を6月末で200人から50人に減らす計画があったが、加藤容疑者は、自分が対象ではないことを派遣会社から知らされていたという。

しかしどうにも、これは関東自動車およびトヨタグループが「そうしよう」とした形跡があります。天漢日乗様も指摘していますが、6/9付のTBSニュースで、

「僕と(加藤容疑者の)2人だけ(会社に)呼ばれて、はっきり6月いっぱいまでと。(その後、契約が)1ヶ月から3ヵ月に延長された。ここ何週間かは悩んだ。人員削減で」(加藤容疑者の同僚)

この証言は基本的に嘘をつく必要はなく、この証言に副うように容疑者はショックを受けて凶行に及んでいます。容疑者の行動とこの事実は綺麗に合致しています。ところが会社側の説明ではこの重大な動機が消失している事になります。もちろんどんな動機であってもあの凶行は許されるものではありませんが、ごく普通に考えて会社側の説明通りなら凶行が発生する事はないかと思われます。容疑者は関東自動車への継続勤務を希望し、翌年3月までという事は1年間の契約延長ですから凶行に及ぶほどの不満が出るとは思えません。

このTBSニュースを踏まえて関東自動車の声明を見ると気がつく事があります。人員削減問題については一切触れていません。触れなきゃいけない事ではありませんが、凶行の直接の引き金になったと考えられる人員削減問題はスルーです。一方で人事担当者筋みたいな話として、「人員削減の対象に容疑者はなっていなかった」との情報を流しているようです。

容疑者も生きており、誰がどう見ても重大犯罪なので警察はこれから綿密に捜査を行なうと考えられます。動機もそうで直接の動機と考えられる人員削減問題もしっかり裏が取られると考えられます。警察にすればここは大事な点で、人員削減対象じゃないのに「人員削減される」と勝手に思い込み、その妄想から凶行に及んだとかなると異常者として精神鑑定問題が争点になりますから、明白な動機がある方が立件には好都合となります。

なぜに関東自動車が人員削減の話をもみ消そうとしているかが問題と考えられます。個人的にはトヨタの高収益のカラクリの一つである、派遣や期間工の問題がこのショッキングな事件で焦点として浮上しないかへの警戒のように思われます。どんなショッキングな事件であっても賞味期限がありますから、事件発生からしばらくのピークの間だけでも派遣や期間工問題に世間の関心が集まらなければ、後で人員削減問題の小さな嘘が露見しても無問題と判断しているように感じます。

それとakagama様のところにあった某巨大掲示板経由の情報を示しておきます。ちょっと読みにくいので編集すると、

マスコミ・その他 時刻 動き
日本テレビ 6/9 16時 トヨタグループである事を報道。必死にオタク趣味が原因とミスリードしてたのに・・・
TBS 6/9 17時 「派遣」までは報道。必死にオタクが原因と印象操作しつつナイフが悪いと報道。
フジテレビ 6/9 17時 同僚登場。未だににオタク趣味が原因と印象操作(アキバ好き男)。トヨタは?
テレビ朝日 6/9 17時 派遣先の記者会見。会社名は出さず。オタクである事を強調。アキバ叩きに必死。
NHK 6/9 午前 トヨタ系列」を報道。
6/9 19時 なぜか企業名が出なくなった
BBC 6/9 午前 オタクのせいにはしないまともな分析の報道。日本のテレビ局の恣意的な報道を批判。
読売新聞 6/9 夕刊前 トヨタ」とちゃんと報道。
産経新聞 6/9 夕刊時点 企業名を出した。それまでは全く情報出さず。(夕刊前の更新あり)ゲーム脳
毎日新聞 6/9 夕刊時点 企業名を出した。それまでは全く情報出さず。(夕刊前の更新あり)。印象操作開始。
朝日新聞 6/9 夕刊時点 企業名を出した。それまでは全く情報出さず。
トヨタ 完全沈黙。不自然なまでに報道されなかったが、6/9夕刊時点から報道されはじめる。
日研総業 完全沈黙。秋葉原オフィスあり。6/9夕刊になって報道されはじめる
関東自動車工業 正式なコメント発表(6/9夕方)。6/8時点でわかっていたのに6/9夕刊で不自然に各社一斉報道。記者会見。
町村官房長官 サバイバルナイフの規制でお茶をにごそうと画策
福田首相 国家公安委員長に厳正な調査を指示。
千代田区 (6/9)歩行者天国を終らせる方向性で会議


ここまでは昨日の下書きなんですが、今日の続報記事を読んでいてもある流れは感じます。綺麗にトヨタの文字は見当たりません。さすがに関東自動車日研総業まで伏せてしまうのは不自然ですが、可能な限り目立たないように掲載されています。これだけショッキングな事件なので再発防止の話も出ていますが、
  1. ネットの問題
  2. ナイフの問題
ここがまず中心にして回っています。もちろん派遣社員の問題にも言及されていますが、あくまでも一般論で「考えなければならない」的な論調です。容疑者がどんな動機を持つにしても許されざる凶行であるのは言うまでもありませんが、この事件から波及すれば困る問題についての対応はほぼ完璧のように感じます。派遣社員をディスポのように使い捨てる事は法律違反ではありませんし、それをトコトン利用して収益を確保する事も法律違反ではありません。むしろより効率的に使う事が「勝ち組」の必須条件とも言えます。

ただし派遣社員をディスポのように使い捨てる事により社会に歪が生じている事は既に周知の事です。この歪が公然と社会問題化すること、またその端緒がトヨタグループから起こる事を避ける企業防衛は成功したと感じています。そんな事を今さら指摘したり、驚く方が初心いとも言われそうですが、余りのあざとさ、またマスコミ、政府まですばやく同調させる強大な力にはひたすら恐怖しています。