事故調法案化情報 委員会編

事故調の構成は三次試案では、

  • 中央委員会
  • 地方ブロック委員会
  • 調査チーム
こういう三層構造でしたが法制化案では、
  1. 中央委員会及び地方委員会は、それぞれ、委員二十人以内で組織する
  2. 中央委員会及び地方委員会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、臨時委員を置くことができる
  3. 中央委員会及び地方委員会に、専門の事項を調査審議させるため必要があるときは、専門委員を置くことができる
これを見ると委員は、
  1. 委員
  2. 臨時委員
  3. 専門委員
臨時委員と専門委員の差がよくわからないのですが、調査チームとは地方委員会の臨時委員、専門委員で構成されると考えられそうです。また委員の任命はすべて厚生労働大臣が直接指名するとなっており、実質は厚労官僚が握ると考えても差し支えなさそうです。なんと言っても厚労省内に置かれる組織ですから人事権も厚労省にありと言うことです。

委員の任期ですが、

  1. 委員:2年、再任可
  2. 臨時委員:担当調査が終われば解任
  3. 専門委員:担当調査が終われば解任
身分は非常勤なんですが、
    ただし、地方委員会の委員のうち四人以内は、常勤とすることができる。
常勤で5期もやれば10年ですから、やはり退職金の関係でしょうか、よく分からないところです。それでもって委員長の選出ですが、
    中央委員会及び地方委員会に、それぞれ、委員長を置き、委員の互選により選任する。
これだけ読めば別に変ではないのですが、中央委員会も地方委員会も委員長は一人です。その証拠に、
    委員長は、会務を総理し、それぞれ、中央委員会又は地方委員会を代表する。
なぜこんな事にこだわるかといえば、次の議事に関係します。
    中央委員会及び地方委員会は、それぞれ、委員長が招集する。
委員長が委員会を招集してなんの不思議もないのですが、そうなると中央委員会は1ヶ所しか行えない事になります。地方委員会も同様です。案件ごとに担当の臨時委員や専門委員が参加するにしろ開催される委員会は一つになります。一方で年間に取り扱う案件は2000件と国会質疑で厚労省は答弁していました。つまり、
    年間2000件を一つの中央委員会で処理する
1年は365日であり、事故調も土日は休みになるでしょうから平日は約260日、さらに年末年始及び祝日は休みになりますからこれを18日として約232日が勤務日になります。1日8時間勤務するとして、
    232(日)× 8(時間) = 1856時間
時に残業もありとして年間約2000時間が総審議時間となります。そうなると1時間に1件づつ処理する必要があります。この算数は三次試案の時にやって余りに無謀としましたが、法制化案では現実にこれを求めている事になります。

では地方委員会はどうかと言えば、これを地方厚生局に置くとしていますから全部で8つになります。人口が違うのですが、地方委員会あたり年間平均250件の処理が求められます。そうなれば勤務日数から勘案すると1日あたり1件強の処理が求められます。中央委員会の1時間よりマシですが、それでも相当な案件処理速度です。

これは試案ではなく法制化案ですから、事故調が始動すれば実際にこれだけの処理能力が委員には要求されます。これより長引けばひたすら滞積されます。1日1件の地方委員会も超人的ですが、1時間1件の中央委員会は超人そのものです。事故調は中央委員会に20名の超人委員と地方委員会に160名の超人的委員を必要としている事になります。


ところでなんですが、三次試案に書かれていた調査チームですが、委員構成からして地方委員会の臨時委員、専門委員が従事すると漠然と思っていましたが、一概にそうとは言えなさそうな条文があります。「医療事故調査等の委託」なる項目があり、どこに委託するかなんですが、

地方委員会は、医療事故調査を行うため必要があると認めるときは、調査又は研究の実施に関する事務の一部を、独立行政法人国立大学法人地方独立行政法人、民間の団体又は学識経験を有する者に委託することができる。

おそらく医師にとって具体的には、

  • 旧国立病院
  • 大学病院
  • 公立病院
このあたりになるかと考えられます。条文では一部となっていますが、現実には大部分になる可能性が十分あると思われます。委託なので形式上は拒否も出来ますが、現実的には正面切って厚労省の委託を断れるものではなく、また医師のための調査と言う側面がありますから委託を要請されたら受けざるを得なくなると考えます。

さらに関係行政機関等の協力なる条文もありまして、

地方委員会は、医療事故調査を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係する独立行政法人の長又は関係する地方独立行政法人の理事長に対し、資料又は情報の提供その他の必要な協力を求めることができる。

これも簡単に言えば都道府県知事、市町村長、学長、病院グループの理事長などに委託要請を強力に求める事ができるものと解釈できます。どの病院も通常業務だけで目一杯の状態のところが殆んどですから、ここに年間2000件の事故調調査の委託が行なわれれば相当の負担に確実になります。もっともよく考えれば臨時委員、専門委員であっても医師の供給源はこれらの病院が主になると考えられ、負担としてはあんまり変わらないかもしれません。いかに厚労相の任命であっても、民間病院にそうホイホイとは要請しにくいでしょうからね。