4/30付け神戸新聞社説より、
自殺の連鎖/皆で悲しい流れ断ちたい
先進国の中で、人口あたりでみる日本の自殺死亡率はかなり高い。そのやりきれない現実をさらに重苦しくさせる出来事が、このところ相次いでいる。硫化水素を発生させて命を絶つ事例である。
神戸では、救おうとした家族が巻き添えになった。高知では自殺者と同じ市営住宅に住む多くの住民が病院に運ばれた。先週末には、東京のホテルで宿泊客を避難させるなど各地で多発した。
きわめて危険なガスなので、影響が瞬く間に広がり、無関係の人まで巻き込んでしまう。深刻な事態である。
だからといって、悲しい連鎖を一気になくするのは難しい。一人一人が足元で悲劇を防ぐ努力を少しずつ重ねる。この機会に、自殺予防の基本をあらためて確かめ合いたい。
硫化水素の危険性は以前から知られていた。汚水槽などで発生したガスを吸ったりして倒れるケースがあった。二年前、温泉地のくぼ地にたまったガスを吸って家族四人が死亡した痛ましい出来事も起きた。
今回問題になっているのは、人工的に発生させた硫化水素で、作り方がインターネットを通じて広まったらしい。兵庫県警はネットサービスを扱う県内のプロバイダーなどに、こうした情報の書き込みがあれば削除するよう申し入れた。
インターネット・ホットラインセンター(東京)に寄せられた自殺サイトなどの有害情報は、昨年一年間で三千六百件にのぼった。わいせつ画像などの違法情報を含め、接続業者に削除を依頼したところ、八割以上が削除されたそうだ。
表現の自由とのかねあいがあるとはいえ、ことは命にかかわる。削除を求めるのは妥当な対策だし、プロバイダーにも真剣な検討を求めたい。
悪用された製品のメーカーも対応に頭を痛めているだろうが、硫化水素が簡単にできないような工夫をさらにしてほしい。
そしてなにより大切なのは、自殺を防ぐ体制を社会で強めることだ。
政府は昨年、二〇一六年までに自殺死亡率を20%以上減少させる「自殺総合対策大綱」を決定した。青少年には自殺予防教育、中高年向けには自殺の要因となる失業などの解消。そして高齢者には生きがいづくり。世代ごとの対策を挙げているが、お題目で終わらず、実効あるものにしたい。
問われているのは、自殺をなくそうとする社会全体の決意である。
自殺する原因は様々にあり、正論的には自殺を起こす原因を社会として取り除かなければならないのですが、そう簡単にどうにかなるのであれば遠の昔に対策が出来上がっています。無駄であると言うことではなく、正論は考えなければなりませんが、現状ではある一定数の人間が自殺を決意しますし、それを防ぎきる良策が無いとしてこの問題を考えて見ます。だいたいサラッと社説が列挙している、
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中高年向けには自殺の要因となる失業などの解消
硫化水素で自殺する問題点は傍迷惑である事です。自殺者本人だけではなく、無関係の人間を被害の巻き添えにする事が一番困ります。他の方法の自殺でも有形無形の被害は与えますが、硫化水素自殺ではその被害がより深刻であるということです。
ここで自殺手段は妙と言うか不思議なもので流行があります。名所からの飛び降りが流行したり、練炭が流行したりです。自殺者の心理を研究した事がありませんからよく分からないところですが、死ぬ時ぐらいは世間の耳目を引くような方法を取ろうとの考えでしょうか。
今回の硫化水素自殺の手段の流布について、この社説では、
- 今回問題になっているのは、人工的に発生させた硫化水素で、作り方がインターネットを通じて広まったらしい。兵庫県警はネットサービスを扱う県内のプロバイダーなどに、こうした情報の書き込みがあれば削除するよう申し入れた。
- 表現の自由とのかねあいがあるとはいえ、ことは命にかかわる。削除を求めるのは妥当な対策だし、プロバイダーにも真剣な検討を求めたい。
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削除を求めるのは妥当な対策だし、プロバイダーにも真剣な検討を求めたい。
まずネット情報の完全規制なんてものが簡単にできたら苦労しません。一度書かれれば一瞬のうちにコピペされ、ネズミ算どころで無い勢いで拡がっていきます。これを根こそぎ見つけ出して駆逐するなんて事を「できる」と考えている事がまず不思議な発想です。こういう現象は注目度の高い事柄であればあるほど著明で、プロバイダが人力で頑張ったところで自ずから限界があります。野放しにしておけとまでは言いませんが、あくまでも姑息な対策の一つに過ぎません。
それよりも何よりも新聞社が冒している大罪にノータッチなのが笑わせられます。硫化水素自殺の発端はネット情報であるかもしれません。しかしこれを全国に周知し、蔓延させたのは他ならぬ新聞を始めとするマスコミです。マスコミが嬉しそうに「またもや硫化水素自殺」なんて報道をするものだから、この世に硫化水素による自殺方法がある事が日本中に知れ渡り、その方法を自殺願望者がネットで探しているのが現在かと思います。
つまり
この負の連鎖の中で情報の流布で巨大な役割を果たしているのが、第二段階の新聞社を始めとするマスコミであることは一目瞭然です。そして社説として主張しているのは、マスコミが増幅拡大した硫化水素自殺法の第三段階のネットで知ることを防ごうです。ここでマスコミが取り上げて周知しなければここまで硫化水素自殺の方法は蔓延しなかったのではないかの視点はゼロです。-
表現の自由とのかねあいがあるとはいえ、ことは命にかかわる。
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問われているのは、自殺をなくそうとする社会全体の決意である。
ネットのような情報コントロールが極めて難しい機関の対応を唯一解決策のように主張するより、マスコミ機関がこの情報を押さえ込む方がはるかに容易であるのはすぐに分かります。マスコミが嬉しそうに触れて回るお蔭で、自殺者が硫化水素による自殺法を選択し、これによる巻き添え被害が量産されています。これについての責任をどう考えているのでしょうか。まさか巻き添え被害を報道する事によって、自殺者が周囲に迷惑がかかるから自制する事を期待しているのでしょうか。そう真剣に考えているのならまさしく愚者です。
硫化水素自殺問題の根本は、この手段が周知されて自殺者数が増えたことではなく、自殺者がこの手段を選択する比率が高くなったことです。ここさえ分かっていれば、マスコミがいかにこの問題で大きな責任を負っている事は明らかだと考えます。