5億と22億と14億でレポート募集

概算要求段階のお話ですが、厚生労働省が「交代勤務制」導入のために5億円投じると言うニュースがありました。概算要求ですから、満額認められるかどうかわかりませんが、満額認められたら交代勤務制が実現できる額とも無理やり解釈できます。無理やりですのでそこのところ誤解無い様にしてください。5億で交代勤務制が実現するのなら、3月の予算委員会で、野党議員の「医師は不足しているのではないか」、「医師の勤務が過酷ではないか」の追及に対し、「100億円の対策費を組んである」と現首相が大見得を切った『巨額の予算』がどうなっているかが気になります。

100億円の使用用途は厚生労働省のHPにあります。このうち

  • 小児救急病院における医師等の休日夜間配置の充実(24億円)
  • 医師派遣についての都道府県の役割と機能の強化(18億円)
  • 産科無過失補償制度への支援(0.1億円)
  • 医療事故に係る死因究明制度の検討等(1.3億円)
  • 平成18年度補正予算案において、小児初期救急センターの整備等の助成及び産科無過失補償親度の創設に向け、調査・制度設計等のための支援を行う。(8億円)
  • 開業医の役割の強化(5.7億円)
  • 助産師の活用(1.6億円)
  • ヘリ救急整備(0.9億円)
以上で59.6億円ですが、ここまでの予算は医師の手許に反映されるものではありません。「小児救急病院における医師等の休日夜間配置の充実」も病院への補助金ですから、医師には基本的に反映されないので、医師の実感としては感じようもない予算です。

そうなると残りの項目は

  • 臨床研修において医師不足地域や小児科・産婦人科を重点的に支援(22億円)
  • 出産・育児等に対応した女性医師等の多様な就業の支援(14億円)
この二つで36億円になります。全部足しても100億円になりませんが、端数とまだ細かい事業があったかと思います。

a.では具体的に何をするかと確認すれば、「臨床研修において」と前置きして、

  • 僻地や離島で研修すれば補助金がもらえる
  • 小児科、産科のローテ中に宿日直をすれば補助金がもらえる
  • 医師不足地域の病院で宿日直すれば補助金がもらえる
この補助金の行方ですが病院の懐に入るだけの見方も可能ですが、趣旨として次のように書かれています。
    へき地・離島の診療所における地域保健・医療の研修、小児科・産婦人科医師不足地域の病院における宿日直研修に対する支援の実施等により、地域の医療提供体制の確保を図る。
医師不足地域への支援で、素直に取れば、そういう地域で働いてくれる医師(この場合は臨床研修限定ですが)を優遇するための対策と読めます。つまり補助金出して金銭的に優遇するから、「僻地や離島で研修してくれ」、「小児科、産科のローテ中に宿日直してくれ」、「医師不足地域の病院で宿日直してくれ」と解釈すべきと言う事です。病院が懐に入れてしまったら、医師確保の意味が薄れると考えます。

4月から予算は執行されているはずですから、

  1. 僻地や離島で研修している医師は他の地域の研修医より給与は上がっているはず。
  2. 小児科、産科のローテ中に宿日直をすれば、他の診療科の宿日直料より高いはず。
  3. 研修医が医師不足地域の病院で宿日直すれば、他の病院の宿日直料より高いはず。
この3点は確実に行なわれているはずです。なんと言っても、交代勤務実現可能の5億円の4.4倍の巨額な予算を傾けているはずですから、勤務されている研修医の懐に確実に反映されていなければ嘘です。これに関して、私は調査しようがありませんので、実際にそういう場所で研修されている研修医の方、もしくはそういう病院で指導に当たり、お手当の実情に詳しい方がおられればレポートお願いします。

b.の用途は具体的には

  • 院内保育所に女性医師の子供でも預けられるようにする
  • 女性医師バンクを作る
女性医師バンクは確かに作っていました。問題はもう一つの院内保育所です。この事業にも交代勤務制実現可能予算の5億円の2.8倍に当たる14億円が費やされていますから、速やかに全国で普及しているはずです。これについても開業医の私では調査しようがないので、育児中の女性医師の方からのレポートを期待します。

できればレポートには感想もお願いします。交代勤務制実現可能予算5億円を遥かに上回る巨額の資金が投じられているので、予想としては感謝感激、雨霰の絶賛レポートの山になると考えています。またこれも概算要求段階ですが、類似の政策の来年度予算は、今年の1.6倍である160億円とも報じられています。そこまでの手厚い施策が行なわれれば、厚生労働省に足を向けて寝られない気持ちに成っても不思議ありません。

沸き立つような期待を胸にレポート待っています。