不思議の国のマドカ:突き破る話

 マドカさんの最近の成長ぶりは凄い。相変わらず端正で上品なところは変わらないけど、棍棒じゃなくて、梱包じゃなくて、内服・・・もういい、とにかく力強さを感じるんだよね。激しく動く被写体もなんの苦にもしなくなったし。ちょっと聞いてみたんだけど、

    「武産合気を取り入れられた気がします」
    「それって・・・」
    「自分と相手との和合、自分と宇宙との和合です」

 アカネと違って、わかって言ってるんだろうな。とにかく合気道四段の猛者だし。そうそう前にラグビーの課題を見た時からなし崩し的にマドカさんの写真も見るようになってるんだけど、

    「どうですかアカネ先生、商売物になってますか」
    「合格だよ」

 こりゃ、えらい自信だ。こういうのを一皮毛むくじゃら、ちがった一皮干し、ちがう、思い出したぞ・・・なんだっけ。まあ、いいか。時々、いやしょっちゅうこの手の言葉を度忘れするのが、アカネの数少ない欠点の気がする。まあ、聞き間違いより害は少ないんだけど。

    「アカネ、マドカに個展を開いてもらう」

 早いよな。まだ入門して二年目だぞ。さすがツバサ先生が見込んだだけの事はある。でも、どうなんだろ。

    「受付もサトル以来だから、気合入れんとな」
 こりゃ、手放しだ。それだけの実力が付いてきたのは認めるけど。ここでイイのかな。この辺が個展をやらずじまいだったから、感覚がつかめないんよね。


 でも、どうにも気になってる点があるんだ。ラグビーの課題の時に顔を出した過剰な女らしさ。あの時は最後の最後になんとかクリアしたけど、消えきってない気がする。アカネの感触からすると克服したのではなく逃げたんじゃないかって。

 言い方を変えれば誤魔化したぐらいかな。だからレベルは数段上がっているけど、どこか違和感がある気がしてるんだよ。ツバサ先生の言うプロの壁を薄皮一枚で突破していない感じ。

 個展を開くのであれば、この薄皮を破ってからの方がイイとアカネは思うのよね。とにかく個展はプロのための最終試験で、落ちれば師弟の縁は終りっていう厳しいもの。ツバサ先生にまさか見えていないとは思えないんだけど。

    「ツバサ先生。お話があります」
    「ほう、やっと初体験を済ませたか。どうだった」

 まだだって。その前に男がいないのも知ってるくせに。それにツバサ先生だって結婚まで大事に守ってたじゃないか。その前の一万年の経験はさておきだけど。

    「どうだ、入って来る時は痛かったか」
    「違います」
    「ほぉ、最初から痛みがなかったとは余程前戯で・・・」
    「誰もそんな話をしてません」
    「まさか、初体験からイッたのか」
    「マドカさんの写真の話です」

 ツバサ先生はビックリしたような顔になり、

    「アカネ、いくら初体験とはいえマドカに撮らせたのか。どうせならサキに撮らせた方が良かったと思うが。まあいい、見せてみろ」

 誰が自分の初体験を写真に撮らせたり、動画にしたりするものか。ましてや、それをどうしてツバサ先生に見せなきゃアカンのよ。エエ加減、アカネのロスト・バージン話から離れやがれ、

    「マドカさんに個展はまだ早いと思います」

 急に顔が厳しくなったツバサ先生は、

    「理由」
    「プロの壁をまだ破り切っていません」

 ツバサ先生は椅子に深々とかけ直して、

    「いや、プロの壁は越えてる」
    「まだです。ツバサ先生には見えないのですか」

 ツバサ先生は大きなため息をして、

    「アカネにはあの薄皮一枚が見えるのか。こりゃ、ホンマに化物だな」

 人をマルチーズに変えようとしたツバサ先生に化物扱いされたくないわい。

    「見えてるならどうして」

 ツバサ先生は椅子を回しながら、

    「アカネにはわかりにくいかもしれんが、マドカは力強さを加える過程で西川流から飛躍しプロの壁を越えたよ。もう、家元の西川大蔵さえ越えている」
    「でも・・・」
    「あれは壁じゃない。あれがあっても、プロにはなれる。でもあれがある限り、永遠にマドカの足を引っ張るし、プロの壁を越えた後の伸びにも影響する」

 だったら、だったら、

    「それを突き破らせるのが師匠の務めじゃないですか。個展で突き破る期待をされてるのですか」
    「個展は成功するが、膜を突き破るのはおそらく無理だろう。そういう個性で生きていくしかない気がしてる」
    「どういうことですか! ツバサ先生らしくないです」

 どうも歯がゆいな。

    「アカネにアイデアでもあるのか」
    「う~んと、う~んと、そうだ、男と付き合うとか」
    「付き合えばどうなる?」
    「恋を知れば女は変わる」

 ツバサ先生は苦笑いしながら、

    「恋したぐらいじゃ、あの膜は破れんよ」

 マドカさんは折り紙付きのバージンだけど、そんなにお嬢様の処女膜って頑丈なんだろうか。

    「今ならむしろ逆効果の可能性もある。アカネ、問題はデリケートなんだ」

 なるほどデリケートぐらい頑丈なんだ。これは相手の男も余程強力じゃないと突き破れないって事だな。アカネのもそうなのかな。最初の時はかなり痛いって聞くし。ふとツバサ先生は怖ろしい言葉を口にしたような表情になり、

    「ところでアカネ、デリケートってどういう意味だ?」
    「バカにしないで下さい。人が真剣に話をしている時に」
    「そりゃ、悪かった。あくまでも念のためだ。だいぶ痛い目にあってるからな」

 アカネだって昔のままじゃないんだから、

    「デリケートってのは、道に物とか置いて通れなくすることです」

 そしたらツバサ先生は茫然としてた。ちゃんと理解してたのにそんなに驚かなくてもイイじゃないか。マドカさんの処女膜はそれぐらい頑丈で突き破りにくい話ぐらい、わかってますよ~だ。アカネが真剣に心配して相談してるのぐらいは見たらわかるのに。

    「アカネ、それはバリケードだ。デリケートとは繊細とか微妙の意味だ」

 あれっ、そうだったっけ。ちょっと勘違い。でも、そんなに差がないじゃない。問題はマドカさんの頑丈な処女膜をいかに突き破るかだものね。

    「とにかくアカネ、もうちょっと待ってくれ。考えてる事がある。マドカに大きく成長してもらいたい気持ちはわたしにもあるからな」
    「なにかマドカさんの処女膜を突き破るイイ手があるのですか」

 ツバサ先生は不思議そうな顔をされて、

    「アカネ、なにか勘違いしてないか」
    「御心配なく。ちゃんとわかってます」

 これ以上はないぐらい、疑わしそうな顔になったツバサ先生は、

    「アカネがマドカのことを真剣に心配してる気持ちは良くわかった。とりあえずマドカの処女膜を突き破る話は終りだ。それではマドカの膜は破れない」
 しっかし、なんて頑丈な処女膜なんだろう。お嬢様を相手にする男は大変だ。アカネは庶民の娘だからすうっと、行くのかな?

不思議の国のマドカ:コトリ卒業

    「アカネ、今夜は特別の仕事だ」
    「えっ、今夜はなんの予定も入ってませんが」
    「だから特別だ」

 聞くとクレイエール・ビル三十階。

    「イヤだ、あそこだけはイヤだ、行きたくない」

 泣き叫ぶアカネだったけど、

    「拒否は許さん。マル・・・」
    「もう、そればっかり」

 渋々、あの恐怖のクレイエール・ビル三十階に。

    『コ~ン』

 ああ、あの音。あれってコケ脅しって言うんだよね。どっかちがうな、まあ似たようなもんやろ。リビングに入るといきなり目に入ったのが派手な飾りつけと。

    『コトリ、卒業おめでとう』

 コトリって聞いたことあるぞ。そうだ、そうだ、ローマの夜に一緒に居た人のはず。

    「コトリ、おめでとう」
    「コトリちゃんも博士だよね」
    「コトリ副社長、おめでとうございます」
    「コトリ先輩、復帰を歓迎します」

 それにしてもコトリさんはえらい格好やけど、

    「みんな、ありがとう。ミサキちゃんも、シノブちゃんもわざわざ来てくれてありがとう」

 今日はアカネも含めて六人だけど、一人知らないのがいるな。制服姿の若い女性だけど誰だろう。とにかくここは特別な場所だから、そうそう入れる人はいないはずだけど、

    「初めまして。休職中ですが専務をやらせて頂いている結崎忍です」

 そしたらユッキーさんが、

    「アカネさんがわかりやすいように言えば四座の女神よ」
 ひぇぇぇ、八十三歳だって。さすがは四座の女神だ。四座の女神と言えば『愛と悲しみの女神』だったら、エレギオン第一次包囲戦での奮戦をよく覚えてる。アングマールの魔王の心理攻撃に対抗するために、城壁に張り付きで頑張るんだよね。

 それも全身を煌々と輝かせながらだよ。さしものアングマールの魔王の心理攻撃も、その輝きが及ぶ範囲は寄せ付けないって感じ。それも昼も夜も二年ぐらい不眠不休で続くんだよね。

    「結崎専務は本当に輝くのですか」
    「輝くわよ」

 だから四座の女神は別名『輝く女神』とも呼ばれてる。さらに第三次エレギオン包囲戦では次座の女神とともに使者に立ち、凄まじい一撃を放つんだ。惜しくも魔王には当たらなかったけど、魔王の本営を木端微塵にするんだよ。あれもホントかどうかユッキーさんに興奮しながら聞いたら、

    「だいたい合ってるよ」
    「じゃあ、エルルと結ばれるのは?」
    「結ばれてるよ」

 まさかこうやってリアルで会えるとは思わなかった。そっか、そっか、この部屋にはあのエレギオンの五女神がそろってるんだ。これこそ夢の世界じゃない。

    「エレギオンの五女神がそろうのは十四年前に一度あったけど、あれが五百年ぶりかな。それとあの時は眠れる主女神だったから、目覚めたる主女神になると今回が四千年ぶりになるわ」

 まさに歴史的瞬間にアカネは立ちあってるんだ。コトリさんは港都大学院エレギオン学科で博士号を取ってるんだよね。でも、でも、それにしてもその姿は、

    「ああ、これ。大学から大学院までウサギやってたのよ」

 なるほど名前が月夜野うさぎだから、ウサギか。

    「だからこれはコトリの正装やねん」
    「まさかそれで卒業式に」
    「もち。でもこれも卒業するから、コトリに戻る」

 パープリンみたいやけど、博士だし、既にエレギオンHDに就職してる。内定やなくて就職なのにも驚かされるけど、もうCFO、CIO、CLOになってて、春には副社長だってさ。

    「ユッキー一人じゃ、無理あるやんか。ちょっとたるんでたから、だいぶ締め上げたった」

 コトリさんは次座の女神。アングマール戦のほとんどの指揮を執り、最後の勝利をもたらせた名将でもある。どんなに切羽詰まりそうな状況になっても、あっと驚く解決策を編み出す別名『知恵の女神』。

    「アカネの仕事はカメラ係だ。このメンバーがここで五人がそろうのは、おそらく今日が最後になる。ミサキちゃんも、シノブちゃんも近いうちに宿主代わりに入るからな」

 なるほど、だから特別の仕事か。そうなんだよね、ツバサ先生はマスコミがあんまり好きじゃないし、とくに写真を撮らせるのが好きじゃない。理由を聞いたことがあるけど、

    『ヘタクソに撮られたくないだけ』

 だからアカネか。あっ、嫌な事を思いだした。

    「ツバサ先生、まさかメシ抜きなんてことは・・・」
    「ああ、食べてもイイし、飲んでもイイ」

 助かった。

    「ただし酔っても質が落ちるのは許さん」

 まずは集合写真。あれ? どうして、

    「今日はコトリさんの卒業記念だから、真ん中はコトリさんの方が」
    「イイのよ、アカネさん。これは五女神の記念写真だから」

 なるほど! だから主女神であるツバサ先生が真ん中か。それにしても美しい。女が見ても美しい。ホントに女神は不老だってよくわかるもの。皺一つないものね。そこからドンチャン騒ぎで楽しかった。ありゃ、見た目だけじゃなくて気も若いわ。

    「シオリ、前に頼まれてた件だけど」
    「なにかわかったの」
    「それがね・・・」

 なにか複雑そうな話やったんよね。

    「なるほど女神の仕事の可能性が出て来たのね」
    「そうなのよ。ここから先は見てみないとわからないし、見れば何が起るか予想がつかいのよ」
    「でもなにか想像もつかないな。というか想像するのも大変すぎる世界よね」
    「わたしもコトリもそうだけど、事実は事実として良さそうなのよ」
    「そんな病気のことを聞いたことがあるけど・・・」

 どこでこの話題になったのか想像も付かないんだけど、性転換の話になってた。

    「ああ、あれね。ドミニカのサリナスの話でしょ。思春期を迎えると男女が入れ替わってしまう現象のこと。原因は胎内で作られる性器と、思春期に大量に出される性ホルモンの相違ぐらいで説明されてるわ」
    「病気なの」
    「どうかな。近親婚が多いみたいだから、遺伝疾患みたいなものかもしれないね」
    「それとは違うよね。ここは日本だし」

 ツバサ先生とユッキーさんが難しそうな話をしてたから、バニー・ガールのお色直しが終わったコトリさんの撮影に。それにしても何着持ってるんやろ。

    「コトリさん、女神の秘術ってあるのですか」
    「えっ、あるにはあるよ。普段はあんまり使わへんけど」
    「たとえば」
    「う~ん、たとえばアカネさんをマルチーズに変えるとか」
    「イヤです」

 どうして、どいつもこいつもアカネをマルチーズに変えたがるんだ。

    「なんかもっとオドロ、オドロしいのは」
    「どんなん?」
    「たとえば魔法陣描いて、生贄捧げてみたいなの」
    「そんなことしなくてもマルチーズに出来るよ」

 だからマルチーズはイヤだって。

    「アラッタの神殿にアカネさんが好きそうなのを集めたものがあったよ」
    「やっぱり、あったんですか」
    「うんにゃ、書いてる事とやる事がそうだけで効果ゼロ」

 ありゃ、ドライな。

    「それに腹立つんよ。どれもこれも穢れ無き処女を捧げるって書いてあるんよね」

 でも定番だよな。というか五千年前から考えてる事が一緒ってのが笑うけど。

    「穢れ無き処女に意味があるのですか」
    「そんなもん、あるわけないやろが。バージンであろうとヤリマンであろうと女に変わりはない。なんでそんなもんにこだわるかコトリには理解できへんわ」

 そりゃ女に代わりはないと言えばそれまでだけど、その手の魔術パワーってそういうところにこだわるもんだし、

    「あの頃のコトリは性欲処理係の奴隷上がりだったから、どれも資格なしになってまうんよ。腹立って、腹立って、粘土板砕いたろかと思た」
 なんだ、コトリさんもこだわってるんじゃない。この辺の女心は微妙だもんね。生贄にはなるのは論外だけど、だからと言って生贄の資格がそもそも無いってされるのはプライドが傷つくんだよね。

 たとえばさぁ、穢れ無き処女の資格で生贄が集められて、自分じゃない女が生贄に指名されるとするやん。そりゃ、生贄にならずに済んだのはホッとするけど、どこで指名された女と差がついたかは気になってモヤモヤする部分は残るぐらいかな。

    「アカネさん、神の秘術と言うても単純に言えば神のパワーの使い方だけなんよ。たとえばホースで水かけるとしたら、先っちょつまんだ方が良く飛ぶやろ」

 なるほど、

    「そんな使い方でも知っとるのと、知らんのでは大きな差が出るんよね。とにかく神同士が出会ってしまえば、タダでは済まないから」

 相当殺伐な世界だわ。

    「それとね、殆どの場合は瞬時に使えないと意味がないのよ。ノンビリ呪文なんか唱えとったら、その間にやられてまうってこと」

 アニメや漫画やったら、どんなに長くても必殺技の名前を言ったり、それを繰り出すための呪文を長々と唱えたりするけど、命を懸けた実戦の場合はそれが隙になってやられちゃうか。言われてみればそうで、柔道の試合でもいちいち、

    『行くぞ、巴投げ』
    『来るなら来てみろ』

 そんなんしないものね。

    「だからアカネさんが期待しているような黒魔術的なものは基本的に存在しないよ」

 さすがは知恵の女神、ツバサ先生より説明が百倍上手い。もっともバニー・ガール姿で言われても説得力が欠けるけど。

    「せっかくだから、ちょっと見せてあげるね」
    「いえ、結構です」

 どうしてアカネを見ると女神どもはマルチーズにしたがるんだろ。そりゃ、ブルドッグにされるよりマシかもしれないけど、アカネは人のままがイイって・・・あれ、コップが浮き上がってる。

    「こういうことだよ。やろうと思ったと同時に出来ないと生き残れなかったってこと」

 そういやマルチーズにされそうになった時も、変化は一瞬だったでイイと思う。フェレンツェでツバサ先生が戦った時もガチの格闘戦だったし。

    「それでもね。別にこんな力はあってもなくても、暮らしていくのに殆ど必要ないんよ」

 そう言って浮かんだコップを取ると、

    「こうやって手で取れば困らないし。それとね、こんな変な能力があるとすぐに化物扱いされて男が逃げちゃうのよね。だから人の前ではまず使わないし、使ってもバレないようにしてる」
 なるほど、そうかもしれない。アカネも女神に憧れるけど、内心は化物扱いしてる部分は無いとは言えないもの。だからユッキーさんも、コトリさんもあんな美しい女性なのに独身のままとか。うん、結婚出来たツバサ先生はエライかもね。

 それより問題なのは、体がポヨヨヨ~んに変わり、顔だって綺麗になってるはずなのに、どうしてアカネに男が出来なんだろ。歳は取らなくなったそうだけど、女神じゃないはずだし。

 寄ってくるのは痴漢とナンパで引っかけて一発やろうって連中ばっかり。そんなんでも、いないより居た方がマシかもしれないけど、あんまり綺麗になったメリット実感してないな。

不思議の国のマドカ:課題の評価

 今日はマドカさんの課題の締切日。でもってツバサ先生のところで最終評価をするからって呼ばれてる。

    「アカネです。入ります」

 入った途端に目から火花が、

    『ガッシャン』

 痛い、やられた。まさかこのシチュエーションで金ダライを仕掛けてくるとは油断だった。

    「アカネ、注意力が足りんぞ」

 そういう問題じゃないだろ。ここは写真スタジオで、剣術の道場じゃないんだから。どうしてドア一つ開けるのに、毎回毎回、あんだけ注意しなきゃならないんだよ。さてと、ここ数日仕事が忙しくてマドカさんの写真を見てないけど。

    「アカネはどう評価する」
 どうって言われても困るんだよな。確かに良くはなってる。途中で散々邪魔してた女らしさのこだわりが、やっと引っ込んだ感じかな。もっと早くそうなってくれたら、間に合ったかもしれないのに。

 だから本音を言えばまだまだ。これじゃ、商売物にならないよ。無理に迫力を出そうとして粗い部分が多いし、その迫力だってもっと必要。写真から伝わって来るパワーが弱いんよね。でも、言うとマドカさんが傷つくだろうから、エエイ、ツバサ先生に振っちゃえ。

    「この写真とか、イイ迫力が出てると思います」
    「ほう、アカネもそう思うか」
    「え、ええ」

 ツバサ先生どうするつもりだろう。

    「わたしもそう思う。マドカ、よく頑張った合格だ」

 あっ、マドカさんの目が真っ赤だ。だろうな、本当によく頑張っていたもの。

    「麻吹先生、アカネ先生、御指導ありがとうございました」

 そう言ってマドカさんが部屋から出た後に、

    「ツバサ先生、マドカさんの写真ですが」
    「どうした、アカネもイイって言ったじゃないか」
    「そうなんですけど」

 ツバサ先生は椅子を回しながら、

    「アカネには不満なんだろう」
    「正直なところ良くなったとは思いますが、まだまだ迫力が足りないですし、商売物にするには粗さが目につきすぎます」
    「そういうだろうと思った」

 えっ、

    「あれがアカネの撮ったものならゴミ箱ポイだよ」
    「だったら・・・」

 ツバサ先生は楽しそうに笑いながら、

    「アカネ、今回の課題でマドカに求めたものはなんだ」
    「あ、はい、上品すぎるマドカさんの写真に力強さを加えることです」
    「アカネすごいぞ、ちゃんと言えた。四字熟語とか格言さえ使わなければ進歩してる」

 ほっとけ、

    「力強さを加える課題はなんとか達成したとは思わんか」
    「そうとは言えますが・・・」
    「アカネ、よく覚えておけ。一度の課題で満点を求めるな。課題の何に合格したかで評価するんだ。マドカの今回の最大の課題は西川流の呪縛からの脱却だ。これで次に確実につながる。この成功体験はマドカの財産に確実になる」

 へぇ、そう見るのか。なんか甘い気が、

    「アカネにはわからんだろうが、これでマドカはプロの壁を乗り越える手がかりをつかんだんだ。一度で越えさそうとするのは贅沢すぎるってことだ」

 そんなものなのかな?

    「アカネ、短期間でも弟子を持ってみてどうだった」
    「そりゃ、もう、大変でした」
    「あははは、マドカが大変か。アカネに較べりゃ、ティラノザウルスと小うさぎぐらい扱いやすさが違うけどな」

 大きなお世話だ、

    「弟子を持つのは手間も時間もかかる。さらにモノにならなければ、弟子の貴重な人生を浪費させたことになる。だからわたしはいつも真剣勝負と思っている」

 へいへい、骨身にしみて真剣勝負を体験させてもらいました。

    「でも持つことで学べることもある。アカネも経験してもイイと思う」
    「そうは言いますが、ツバサ先生やサトル先生を差し置いて、アカネに弟子入りしたいという物好きなんていますかね」
    「天下の渋茶のアカネ先生だぞ」
    「渋茶は余計です」
 でもさぁ、やっぱり普通に考えたらツバサ先生かサトル先生だよな。だいたいオフィス加納に弟子入りすること自体が大変だし、師匠を指名する権利だけは弟子にあるし。そういえば、弟子入りが大変なのはアカネをウルトラ例外として、まず求められる水準が高いことがある。

 そりゃさ、いくら才能があってもアカネみたいなのがずらっと並ばれたりしたら、ツバサ先生だって悲鳴を上げるものね。アカネだって、もし弟子が出来てもアカネ並のレベルだったら絶対にサジ投げる。

    「そうだこれもアカネに最後に教えておくことの一つになる」
    「なんですか?」
    「それは弟子の才能を見極める練習だ」

 ちょっと待った、ちょっと待った。それは違うだろ。ツバサ先生は部屋の片隅に積み上げてある段ボール箱を指さして、

    「幸い練習材料は豊富にある。全部持って行ってくれ」

 ぎょぇぇぇ、やられた。ツバサ先生は審査を逃げたがるんだよな。今回マドカさんの件を任したのは、それをさせるための布石でもあったんだ。コンチキショウ。

    「選んだら持ってこい。審査してやる」
    「それってツバサ先生がサボりたいだけじゃないですか」
    「師匠に向ってなんてことを」
    「師匠だからって、こんな命令なんて聞けませんよ~だ」

 フンと鼻で嗤ったツバサ先生は、

    「アカネ、逃げられると思うか」

 こんなもの部屋から逃げ出せば終りだろ。

    「やりませんよ~だ」
    「アカネ、マルチーズになりたいか」
 卑怯だぞ。この恨み、どこかで必ず晴らしてやる。でもマルチーズはイヤだ。

不思議の国のマドカ:神の存在

    「ユッキー、円城寺家と新田家の追加調査報告書だよ」
    「ありがとう」

 ユッキーは読みながら、

    「倉麿って子どもが多そうな感じがあったけど三十三人って」
    「化物みたいや。最後の子どもなんて、七十七歳の時に生れてるもんね」

 こんな化け物みたいな男を相手にすると楽しいかな。もっとも子どもを作る能力とアレが上手なんは必ずしも比例せえへんし。これだけ子どもを作れるってことは、ムチャクチャ早漏の可能性だってあるものね。

    「もっと凄いというか、すっごく不自然なのは息子は三人だけで、娘が三十人なのよ」
    「そりゃ、いくらなんでもやろ」

 そりゃ、いくぶん偏るのはよくある話やけど、それも十人ぐらいまでの話。三十三人もおって、この偏りはひど過ぎる。

    「うわぁ、北田家もすごいことになってる」
    「そうやねん、源兵衛の孫息子が五人いて、その嫁が全部倉麿の娘。そいでもって生まれた十七人全員が娘ってありえへんやろ」

 これが北田家の運命を決めることになるんよね。まず倉麿の三男の四歳の久麿が北田家の養子になるんやけど、北田家と円城寺家にスペイン風邪の猛威が吹き荒れるんや。倉麿の長男と次男、さらには源兵衛の孫息子まで死んでまうんよ。

    「それにしても、よう死んでるけど。日本じゃそこまで死亡率高くなかったんじゃなかったっけ」
    「スペイン風邪の死亡率が高かった原因は諸説あるけど、北田家も円城寺家もおカネがあったからじゃない」
 とにかく高熱が出るから、アスピリンをバンスカ使うのがポピュラーな治療法やったらしい。ただ使いすぎると肺水腫とか起こすらしい。これだけが死亡率の高い理由じゃあらへんけど、これも死亡率を押し上げる原因の一つになってるとされてるんやて。

 ところがアスピリンはドイツの特許やってん。日本は輸入しとってんけど、第一次大戦で特許無効になって国産化してるんよね。ただやけどスペイン風邪の時にはまだまだ生産量が少なかってんよ。つまりは高かったってこと。そのうえ自費診療時代やから、アスピリンをバンバン使える患者は限られとってん。

    「でも子どもは死んでへんな」
    「子どもには使わないのが当時のスタンダードだったの」

 結果として跡取り息子が久麿だけになった北田家と円城寺家は協議の結果、久麿を円城寺家に戻すことになったんよね。

    「この辺はどうしたかはわからんけど、北田本社の社長に倉麿がなり、やがて北田家の財産ごと円城寺家に吸収されてるわ」
    「タネはこれじゃない。ほら倉麿の娘の嫁ぎ先。バリバリの政略結婚じゃない」

 倉麿が剛腕なのはよくわかる。さて話は戻るけど、なんであないに娘ばっかり出来てんやろか。

    「息子は殺してもてんやろか」
    「時代的には男尊女卑よ。家の跡取りは重要だったじゃない。それに息子を殺してたら、倉麿の子は六十人超えることになっちゃうよ」

 それもそうだ。

    「こっちも不自然過ぎる気がしない。倉麿の娘で子どもを産んだのが十四人、源兵衛のひ孫娘で子どもを産んだのが八人よ」

 半分しか子どもを産めてないんよね。これもいくらなんでもやもんな。

    「思うんやけど、倉麿は息子が不要だった訳じゃなく、娘が必要だったと見れへんやろか」
    「そりゃ、あれだけ政略結婚に使ってるから、いくらいても良かったかもしれないけど」
    「だったら息子を娘に変えてたんとか」
    「無理よ。性転換手術はあくまでも成人対象だし、手術跡も残る。それに男らしく、女らしくあるためにホルモン注射も欠かせないよ。まだ戦前の話だよ」

 そらそうやねんけど、

    「でもユッキー、こうは見れへんか。円城寺の三十人の娘のうち十四人が本物の娘。北田の十七人の娘のうち八人が本物の娘やったと」
    「統計的には合理的な解釈だけど、技術的には不可能よ」

 そう人ならばね。

    「神なら出来るかも」

 ユッキーが考え込んでもた。

    「コトリはやったことある?」
    「ないよ。男を経験したかったら、前にカズ君にユッキーが宿ったみたいにすればエエやんか」
    「容姿の変化の応用だから、外見はそれほど難しくないと思う。性器は難度が高くなるけど不可能じゃない。でも中身までとなると超難度よ」
    「だから子どもが出来なかったんちゃうか」

 ユッキーはまたもや考え込んで、

    「それと人の性転換手術と同じで、成人相手ならそれ以上の変化がないからイイけど、生れたての赤っちゃんからとなると、成人するまで常に手を加えていかないといけないよ」
    「倉麿なら出来る位置にいるし、手を加えると言っても一年か半年に一回ぐらいでエエんちゃうやろか」

 二人で黙り込んでしもた。それからユッキーが、

    「トンデモないものを掘りだした気がするわ。これは女神の仕事だね」
    「その神やけど、おったとしても一代おきの気がするねん。久麿の次の敏雄の子どもも気になるんよ」
    「息子が一人で娘七人だものね」
    「そのうえ、子どもを産めたのが三人」

 なにかが起ってるし、神が関わっていそうなことだけはわかる。でも、これをどうするかが問題。もっとも神相手なら相手も不死だから、滋麿さんや綾麿さんの無念を晴らせるかもしれん。

    「今の栄一郎は子どもが二人、兄が洋一で、妹がまどか」
    「新田の方も存在確実の和明」
    「そっか、そっちも関わってる可能性もあるのか。執事の新田が実在の時は円城寺の子どもはノーマルな構成で、不在の時は娘に極端に偏ってるとか」
 さてどうするか。

不思議の国のマドカ:麻吹アングル

 マドカさんの表情が苦しそう。そりゃそうだと思う。でもアドバイスしようがないのよね。そう言えばアカネの時にも同じような状況があったような。あの時はアカネ・ワールドを作って対抗するにもアイデアが浮かばず、正面から立ち向かうには時間が足りずで苦悶してたんだ。

 それを見取ったのか、ツバサ先生は気分転換をさせてくれた。あの時は余計な事をと思ったけど、あそこが転機になった気がする。あの時は一週間の遊園地の仕事だったけど、そこまでは今回は時間がない。でも一日でも気分転換をさせると変わるかも。

    「マドカさん、言ってもイイ」
    「なんなりとお願いします」
    「ちょっと休んだ方がイイと思う。あんまり根を詰めると、かえってよくない事があると思う」

 とは言うものの、気分転換になにしよう。今から遊園地も変だし、飲みに行くのもどうってところ。

    「それなら少し教えて頂きたいことがあります」
    「なに」
    「麻吹アングルを」

 麻吹アングルか。まあ、これでもいっか。とにかく他の事に気を向かすことが出来ればイイ訳だし。ただ別に隠すようなものじゃないんだけど、教えるのが難しいのは確か。この辺はアカネが理論派じゃないのも大きいかな。もっともツバサ先生によると、

    『アカネは全部カンで撮ってるようなものだ』

 全部とは言わないけど、ハズレてもないとは思ってる。とりあえず見てもらうことにした。

    「テーブルの上の花瓶を撮ってくれるかな」

 マドカさんの写真は基本通りってところかな。これはこれで合格点なんだけど、

    「これがアカネの撮ったもの」
    「あれっ、こっちの方が明らかに良いですね」

 麻吹アングルのベースはもちろん加納アングルなんだけど、あの考え方の基本は、

    『基本アングルは合格点だが、満点ではない』

 もちろん満点アングルが基本アングルの時もあるけど、まったく違う見方で満点アングルを探し出してるんだよね。それも満点アングルは一つじゃないんだ、

    「マドカさん、こういう撮り方もあるの」
    「こ、これも良いですね」
 被写体のベスト・アングルが満点アングルなんだけど、ベスト・アングルがこれまた常に満点アングルじゃなくて、カメラマンの撮りたいイメージが入ってくる。ロケとかだったらお天気の影響もあるから、常にクルクル変わって来るんだよ。

 加納アングルとは被写体に対するベスト・アングルとカメラマンが撮りたいイメージを合わせての満点アングルをいつでも見つけられる、いや、自然にそうなってるテクニック全般のことを指すで良いと思ってる。

 マドカさんは西川流出身だから、どうしても写真を理詰めで考えるし、理詰めで考えるのは悪くないと思うけど、加納アングルは理を越えたところがあるから、なかなかキモの部分を教えて理解してもらうのは大変なんだよね。

 ついでに言えば麻吹アングルは加納アングルをさらに進化させたもの。わざと満点アングルを微妙に外して、そこから生まれる意外性を狙ったもの。ちなみにツバサ先生とアカネでは使い方が微妙に違うんだ。この辺になると感性の差としか言いようがない。ツバサ先生にも聞いたことがあるけど、

    「あははは、あれを駆使できるようになったアカネの方にビックリするわ。あれは光の写真の応用技術だからね」

 ツバサ先生によると光の写真もゴチゴチの写真理論から生み出されたものみたいで、

    「写真の素人でも撮れる」

 ツバサ先生の加納志織時代の旦那さんが産み出したものだそうで、

    「カズ君の写真は、入門時のアカネが見下せるぐらいヘタクソだった」

 ただ習得するとなると半端じゃなぐらい難しく、ツバサ先生も使いこなすまで一年ぐらいはかかったとしてた。そこからの応用技術だからツバサ先生も弟子に教えるのは難しいんだって。

    「じゃあ、アカネも光の写真を撮れるようになるかもしれないのですね」
    「撮れるよ。アカネが撮れなきゃ、誰も撮れない」

 マドカさんの方だけど、マドカさんなりに加納アングルの考え方を理解してくれたみたいで、

    「アカネ先生、アングルっておもしろいですね」
    「マドカさんも、そのうち見えて来るよ」
    「どんな感じに見えるのですか」
    「被写体からすうっと線が伸びてる感じかな」

 そうそうツバサ先生に聞いてみたんだけど、

    「カレンダーの時にツバサ先生が想定していたアカネの答えはなんだったのですか」

 ツバサ先生はおもしろそうに笑って、

    「課題への答えは一つとは決まっていない。とくにアカネの場合はそうだった。むしろどういう答えを見つけ出すかに注目してた。とりあえずわたしが想定していたのは、その奇抜な発想力で、まったく違う世界を出現させるぐらいかな」

 それは途中まで考えてた。

    「それも合格だったのですか」
    「もちろんだ。当時のアカネでは加納志織との差は悪いがかなりあった」

 そうだったと思う。あんなもんに正面から対抗するなんて、さすがのアカネでも無謀すぎると思ったもの。

    「だから、わたしは加納志織を交わし、アカネ・ワールドを作りだして壁に挑むと見てたんだ」

 そこまで計算してたんだ。でも無理だったんだよね。交わすにも加納先生の壁は巨大すぎて、逃げ場が見つからなかったんだ。

    「アカネに心底驚嘆したのは、交わしきれないと判断した点だよ」
    「交わせない課題だったのですか」
    「ちょっと違うかな。もし交わして、アカネ・ワールドを作っていても一流のプロになっていただろう。でもアカネは交わした世界が許せなかったんだよ。それじゃあ、加納志織を越えていないし、そんなものは交わしたことにならないってね」

 ちょっと話が複雑だなぁ

    「あの時に交わしていても、それが不十分だと気付くフォトグラファーはまずいないよ。交わした世界でアカネ・ワールドやっていても十分売れっ子で食べて行けたはずだ。でも、アカネはその世界を嫌ったんだよ。ホントにアカネらしいと思ったよ」

 これは褒められてるんだよね。

    「あのカレンダーの仕事でアカネが踏み込んだ領域は、プロの壁のレベルじゃない。あそこまで踏み込んだフォトグラファーは知る限り一人しかいない」
    「誰ですか?」

 ツバサ先生はニコニコ笑いながら、

    「そんなものわたしだけだ。一流とされてるプロでもほとんどがプロの壁を越えたあたりに留まってしまう。その先があるとは思えないんだよ。それぐらい越えるのが難しく、越えた時に写真の頂点を極めた気分になるものさ」
    「ツバサ先生もそうだったのですか」
    「そうだよ。そりゃ、その上なんてあると思えなかったよ。せいぜいあるのは同じぐらいの高みの写真だけ。西川大蔵が写真の究極と考えて西川流を作った気持ちが少しはわかる。加納志織は西川大蔵への対抗心から西川を見下ろすところまで自分を高めたのさ」

 そこから昔を思い出すように、

    「しかし加納志織もそこまでだった。それ以上を目指すモチベーションをもてず、晩年はカメラを置いた時期まであった。そんな加納志織をアカネは二年で追い抜いてしまったんだよ。わたしは嬉しくてしかたがない」
    「そんなライバルを育てて損したとかの気分は?」

 ツバサ先生は大笑いして、

    「どうしてだ。加納志織は孤高だった。孤高だったが故にあの歳までかかって、あそこまでしか登れなかった。でも麻吹つばさは幸せだ。これ以上は無いライバルが、この先死ぬまでいるんだぞ。これからどれだけ高みの登れるかと思うと興奮してしかたがない。アカネはそうじゃないのか」

 ツバサ先生は偉大だ。ライバルの出現なんて、自分のモチベーションの糧ぐらいにしか考えてないんだ。アカネに抜かれるなんて微塵も考えてない。ただ上を目指すだけ、

    「そのうち追い抜いてやります」
    「はは、楽しみにしとく。その前に男作れ、恋もまた写真を高みに登らせる」

 それはそうかもしれないけど、なかなか出て来ないんだよな。

    「さて、今晩はどこまで高みに登れるかな」

 う~ん、エッチの喜びはツバサ先生のアドバンテージが高すぎて、追いつくのは無理だもんね。あっちは一万年だし、日々離されてるもんな。これ以上離されないためには、まず初体験が必要だけど。

    「とりあえず一発やったら報告に来い。ゆっくり聞いてやるぞ」
 タンマリ仕返ししてやる。なんか燃えてきた。